会社やNPO法人・社団法人などで 講演や執筆を依頼した場合
その報酬を払うときに 源泉徴収を行わなければなりません。
最近の税務調査では この源泉徴収がちゃんとされているかどうかを
確認されることが増えています。(指摘する側としては簡単ですからねぇ)
源泉徴収をしなければいけない支払いは結構ややこしく
きちんと処理しているつもりでも 税務調査で指摘されるということが
ありますので ポイントを押さえておきましょう。
まず相手が法人か個人かで判断
まずは、支払う相手が「個人」なのか「法人」なのかを確認しましょう。
講演にきた講師が個人であっても 所属している会社(法人)に
報酬を支払う場合は源泉徴収は不要です。
「個人」なのか「法人」なのかは、
請求書や報酬の振込先を聞くときに確認できますね。
源泉徴収をする場合 天引きする源泉徴収する金額は?
次に源泉徴収する金額ですが(支払額から天引きする金額)
平成49年12月31日までの間に発生したものについては
所得税及び復興特別所得税を源泉徴収しなければなりませんので
支払額が100万円以下の場合は
支払額の10.21%を引くことになります。
支払額が100万以上の場合は
(支払額-100万円)×20.42%+102,100円 という計算になります。
(例) 150万円の弁護士報酬を支払う場合
(150万円-100万円)×20.42%+102,100円=204,200円
源泉徴収すべき所得税及び復興特別所得税の額は204,200円になります。
なので 150万円-204,200円 =1,295,800円
を報酬として 支払うことになります。
源泉徴収しなければならない報酬とは?
たまに、
「報酬」であれば必ず源泉徴収が必要であると思っている方がいますが、
そうではないです。
源泉徴収をしなければならないものは 所得税法という法律に
限定列挙(書いてあるものだけが対象)されていますので
それ以外であれば
源泉徴収をする必要はありません。
よくあるものを具体的にあげておきます。
① 講演料
② 原稿料
③ 技芸・スポーツ・知識等の教授・指導料
④ 翻訳料、通訳料
⑤ 税理士、弁護士、司法書士などへの報酬
などです。
天引きした源泉徴収をどうするか?給与とは違う
天引きした源泉徴収は
支払った翌月10日までに税務署に納付することになります。
給与の源泉徴収については、納期限の特例があり、
職員が10名以下であれば、届出をすれば、半年に 1回の納付でも可能です。
しかし、報酬の源泉徴収にはこの特例はありませんので、
支払った月の翌月10日までに税務署に納付することになります
(税理士、司法書士等の報酬は納期限の特例が使えます)
また、納付書も給与の源泉徴収の納付書とは別の納付書になります。
なので 講演料や原稿料の支払いがあった場合は
そもそも納期限の特例を受けていても
報酬に対する源泉徴収税額は
支払った月の翌月10日までに税務署に納付することになりますのでご留意ください。
源泉の計算 消費税は含めるの?
源泉徴収の対象となる金額は、(10.21%をかける金額)
原則として、報酬・料金として支払った金額の全部、
すなわち、消費税込みの金額が対象となります。
ただし、報酬の請求書等に
報酬・料金等の金額と消費税等の額とが明確に区分されている場合には、
消費税等の額を除いた報酬・料金等の金額のみを
源泉徴収の対象としても差し支えありません。
例えば、平成29年中の税理士からの請求書に
税理士報酬108,000円とだけ記載されていた場合には、
源泉徴収税額は108,000円の10.21%相当額である11,026円(1円未満切捨て)となります。
税理士からの請求書に、
税理士報酬100,000円、消費税等8,000円と 報酬と消費税部分が
分けて記載されている場合は
源泉徴収税額は 報酬部分のみに対してでよく
税理士報酬100,000円の10.21%相当額である10,210円となります。
領収書の書き方
領収書の書き方は 元々の報酬額を書くのか実際に支払った額を書くのかどちらでしょうか??
わかりやすく言えば
源泉徴収されていること、源泉徴収されている金額が解るように書いてあれば どのような書き方でもOKです。
上記の例でいくと源泉徴収前の108,000円を領収書に書いて、
「上記のうち10,210円を源泉所得税としてお預けしました」としてもいいし、
手取りの97,790円を領収書に書き、
別に「上記のほか10,210円を源泉所得税としてお預けしました」などと
記入しても構いません。
源泉は 支払った側がそのお金を預かることになるのでこのような書き方になります。
普段 給与の支払がなくても源泉徴収は必要
報酬を支払う側が法人の場合は源泉徴収の対象になる支払いをした場合には、
普段 給与の支払いをしていなかったとしても、源泉徴収をする必要がありますのでご留意ください。
この法人には 株式会社だけではなく
NPO法人、一般社団法人、非営利団体等も含まれます。
ただし その報酬・料金等の支払者が個人であって、
その個人事業主が 普段、人を雇ったりして給与の支払いを行ってない場合は
ホステス等に報酬・料金等を支払う場合を除き、源泉徴収する必要はありません。
常時2名以下の家事使用人のみに対して給与等の支払いをする個人が
給与や退職金、弁護士報酬や税理士報酬などの報酬・料金については
所得税の源泉徴収をしなくてもいいことになっています。
ただ、現実問題、弁護士さんが「常時2名以下の家事使用人のみ」という事業状況なのかどうかはわからないことが多く
源泉を引いた請求書が発行されることもあるのではないかと思います。
源泉徴収しないとどうなるか
例えば、
5万円の講演料を源泉徴収せず5万円そのままの支払いをしたら、
税務署は、源泉を天引きした後の金額が5万円であり、
報酬は5万円+源泉徴収税額と考えます。55,685円
(つまり、本人に対しては報酬はきっちりと支払われたと考えます)
従って、報酬額は55,685円で
源泉5,685円分が納付漏れということになり
源泉5,685円分及び加算税、延滞税などを負担することになります。
これを負担するのは
報酬を受ける人ではなく 報酬を支払った側となります。
交通費・旅費には 源泉はかからない?
よく聞かれるのが
「交通費として払った場合は源泉はしなくていいのでしょうか?」という質問です。
例えば 講演料3万円とは別に旅費として1万円を支払い、
この旅費について源泉徴収をしていないということです。
この旅費については、
名目が旅費であったとしても、報酬の一部とみなされ、源泉徴収の対象となる場合があります。
「交通費として払っとけばいいや」ということではないということです。
ただし、直接旅行会社などに 報酬を支払う法人が直接支払いをしていれば
源泉徴収の対象とはなりませんし
新幹線のチケットを用意して それを講師に渡した場合なども
源泉徴収の対象とはなりません。
現実に多いのは、講師の方が自分で旅費の手配などをして、
領収書を持ってきて精算をするような場合であると思います。
講師側が 報酬の請求書に交通経路を明記し
実際にかかった金額をそのまま請求している場合などは
旅費と認識され
源泉徴収の対象とはなりません。
お手盛りで交通費を渡した場合は報酬の一部とみなされますので 注意が必要です。
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