軽減税率の導入で大混乱 イートイン脱税は罪なのか?脱税ではない「イートイン脱税」

消費税増税、軽減税率が導入されて1か月がたちました。
私は増税以降、食事関連と交通費以外はほぼ支出していません。
事務所の備品も9月までの駆け込み購入で充分まかなえていますし
「意地でもお金使わないぞ!」って感じです。
これまでもなんどか消費税の増税が行われそのたびに消費が冷え込みました。
今回は、その冷え込みをなくそうと 軽減税率やポイント還元やキャッシュレス還元など
稚拙な政策が行われています。
また今回、消費が冷え込めば 次の消費税増税がやりにくくなるからです。
個人的には上記 政策には反対ですし(よくこんないい加減なことやったなという感じ)
消費が冷え込んで次の増税の足かせになればいいと思っています。
関与しているお客様のことを考えるとあまり大きな声ではいえないですが・・・。

さて、巷をにぎわせている「イートイン脱税」という言葉
私達税理士は 軽減税率導入前から「そらそうなるでしょうよ」と思っていました。
お客様にも「持ち帰りますっていえば安いですからね」と伝えていました。
果たしてこの私のアドバイスは「脱税ほう助」なんでしょうか?
いったい何が問題なのでしょう?

そもそも同じ商品なのになぜ8%と10%の違い?

同じ商品を購入するのになぜ消費税率が違うのでしょう?
これが「軽減税率」です。
軽減税率とは 基本の税率(今のところこれは10%)があって
でも一部のものについては基本税率より低くていいですよ(これが今のところ8%)という制度です。
で、この軽減税率の対象が「酒類・外食を除く飲食料品」となっています。
「外食」なら10% 「飲食料品」なら8% というわけです。
この「外食」かどうか は飲食店で食べるなどでしたらはっきりするのですが
デリバリーや出張ケータリング、そして今回問題のファーストフードなどでは
「外食」なのか「飲食料品」の提供なのかがはっきりしにくい。
そのため「イートイン脱税」というような問題がでてきてしまっているのです。

イートイン脱税ってなんでしょう?

「イートイン脱税」という言葉は新しくできた造語です。
上記のように「外食」なら10% 「飲食料品」なら8% というルールなので
外食産業で同じ商品を購入しても
持ち帰ったら(テイクアウト)⇒飲食料品の提供で 消費税8%
店内で食べたら(イートイン)⇒外食で 消費税10%
と 消費者が払う消費税が変わってきます。
つまり 「持って帰ります」といえば 店内で食べるより2%低い支出ですむのです。
例えば、税抜2000円分の食料品を「持ち帰ります」といえば
2,160円を支払い
「店内で食べます」といえば2,200円の支払いになりますので
40円差が付きます。
商品金額が大きくなればなるほどこの差はでてきます。
「持ち帰るっていえば 支払金額は少なく済むじゃん!」って話です。

8%か10%はいつの時点で決まる?

消費税8%で計算するのか消費税10%で計算するのかは
「食料品提供時の購入者の意思で判断」ということになっています。
商品購入の際に 購入する人が「店内で食べる」といえば10%
「持って帰る」といえば8% となっています。
なので、商品を買う人はレジで「持って帰ります」といえばその時点で消費税8%が
確定します。
その後、店内で食べたかどうかは法律上では問うていないのです。
あくまでも「食料品の提供時」(購入時)ということになっています。
だから、「あなた 持って帰るといったのに店内で食べているではないですか!」という
「正義マン」や「イートインポリス」は 法律を理解していない人になってしまいます。
(ずるいと思われる気持ちはよくわかります)

イートイン脱税は「脱税」なのか?

商品値段と共に消費税を払う消費者は 実は「消費税の納税義務者」ではありません。
納税義務者とは 誰がその税金を国に納めなければいけないか ということで
その税金を納めなかった場合「滞納」ということになり
払うまで追及される人です。
結局店内で食べたのに「持って帰ります」といって消費税2%分を払わなかった人は
そもそも消費税の納税義務者でないため脱税をしたわけではないのです。
消費税法では「消費税の納税義務者は、事業者と外国貨物を保税地域から引き取る者」と
決められていますので
消費税の納税義務があるのは 消費者(お客さん)から消費税を預かっているお店なのです。
「イートイン脱税」は脱税行為ではありません。
しかし仮にお店側が お客さんが店内で食べますといっているのに
「消費税8%として処理をした」となるとこれは脱税となってしまいます。

 

外食産業における イートインとテイクアウトの区別での混乱は
軽減税率導入前から予測されている話です。
その混乱の収拾を 現場任せにしている国に立法責任があると思います。
「イートイン脱税」問題は 持ち帰るといって店内で食べている人が違法行為をしているわけでも
消費税8%で請求したお店側に罪があるわけでも
ありません。
こうした穴だらけの立法をした国に責任があるのです。
今は 基本税率と軽減税率の差が2%ですが 消費税基本税率がどんどんあがっていけば
この差は大きくなるため
こういった軽減税率にかかわる問題は 大きな問題になっていくような気がします。

個人的には こちらの記事にも書いたように軽減税率は反対ですが・・・
日本の消費税はいずれ20%に??
 https://blog.takeda-mitsuko.com/shouhi

※この記事は、投稿日現在の状況、法律等に基づいて書いていますことご了承ください。









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