自宅を事務所や仕事場として使った場合、家賃は経費でしょうか?家事費の経費計上

個人事業主さんで 自宅を一部を事務所として使うというのはよくあります。
最近は ネット社会の恩恵で
「家賃の一部が経費にできる」という情報も周知され
自分で申告されている方も 家賃をちゃんと経費にされていることが多いです。

ただ、「自宅家賃も仕事で使えば経費になりますよ!」という
ネットに書かれていることを鵜呑みにして
「経費になって当たり前」という感覚で会計をしていると
税務調査の際に 痛いしっぺ返しがくるかもしてません。

税法的な考え方はどんな感じ?

私生活と事業がごっちゃになりがちな個人事業者の経費については
取り扱いが法律で決まっています。

個人が支出するお金は大きく分けて
・家事費(事業をしていなくても生活していくために使う支払い)

・事業経費(事業売上をあがるために必要な支払い)

・家事関連費(上記の両方に関係する支払い)

という分け方をすることができます。

「自宅を一部を事務所として使っています」という場合の家賃は
最後の「家事関連費」に該当します。

この「家事関連費」の取り扱いについては
所得税法45条に
「家事関連費は経費にならない」というのが書かれていますので
これが考え方の大原則です。

つまり
「ちょっとでも事業で使っていれば 当然に経費になります」
という考え方ではないということです。

認めてもらっているという感覚は大事

自分が住むために借りた部屋(家も含みます)は
居住用ですから 「原則 経費ではない」ということです。

しかし
「実際には一部屋を仕事場にして事業関連の書類しか置いてなし
事業専用の電話回線も引いている」というような場合は
経費にならないというのもおかしいです。

よって、施行令等(手続きとか現実問題どうやねんという補足が書かれているもの)
では
「こういう場合は 経費として認めてあげるよ」とあります。

その場合とは
「・・・所得を生ずべき業務の遂行上必要であり、かつ、
その必要である部分を明らかに区分することができる場合に
おける当該部分に相当する経費」
と法文には書かれています。

どういうことかというと
売上(利益)を得るために 事業を行うためにはその支払が必要であって
なおかつ
その必要である部分が明確に分けられる場合

 

というわけです。

 

つまり、「本来であれば経費にはならないんだよ、
でも杓子定規に「ダメ」というと不公平な事例もでてくるので
限定的に認めてあげるよ」

という話で

「事業用に少しでも使っていたら
按分して経費計上できますよ」ってことじゃないのです。

 

事業用に使う部分が50%を超えるかどうか

他にも

「業務の遂行上必要であるかどうかは、
その支出する金額のうち
当該業務の遂行上必要な部分が50%を超えるかどうか
により判定するものとする。」

とも書かれていますので
まずその支払いが50%以上、事業に必要な支払いがどうか
というのが
「一部でも経費にいれていいかどうか」の判断基準になります。

じゃあ、50%を超えていない場合は
経費に計上したらダメなのかというとそうではありません。

法文には続いて

「当該必要な部分の金額が50%以下であっても、
その必要である部分を明らかに区分することができる場合には、
当該必要である部分に相当する金額を必要経費に算入して差し支えない。」

と書かれていますので
「明らかに区分できれば経費にしてもOK」ということです。

実際には?

例えば家賃を例にとってみると
まずもって 事業所地を自宅の一部屋にしていること
実際に一部屋を仕事用に使っていること(明らかに区分)

→ワンルームでベットがあり普通に生活をしていて
そこにある机で仕事するようにしています とか
家族が毎日くつろいだり食事をしたりするリビングで
たまにお客さんがきて応対しますというのではダメ

家賃×仕事用の部屋の面積/総面積
というように
社会通念上 認められる按分基準で
経費計上額を算出(当該部分に相当する経費)

というのであれば経費計上できます。

 

 

「原則は経費計上はダメだけど
条件をクリアすれば 認めてあげるよ」という感覚が
ドンドン緩んできているような気もします。

専門家(税理士)であれば
税務的思考があるので
「経費にできない」のではなく
ちゃんと要点を踏まえて経費にするのですが
専門家でない人(コンサルタントやFPなどなど)が
ネットで税法をよく理解もせず また税法的感覚もなしに
「こういう節税が!」と提案しまくった結果
今後の実務をやりにくくするような判例が数年前にでました。

また紹介させていただきます。

※この記事は、投稿日現在の状況、法律等に基づいて書いていますことご了承ください。









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