「融資格付け」の話をしましたが、
決算書がそく「正常先」などの5区分に判定されるわけではありません。
まずそれぞれの金融機関独自基準で決算書を採点します。
今ではこの作業をコンピューターで行っていることが多いので、「この決算書は80点です」というように決算書が機械的に評価数字に置き換えられます。
それから3か月ごとに
例えば100点~75点は「正常先」というように5つの債務者区分が決定されるのです。
となると74点は「要注意先」で75点は「正常先」というように1点差で債務者区分がわかれる場合がでてきます。
債務者区分が低いとその分引当金を多く計上しなくてはいけないので金融機関にとってもデメリットです。金融機関としても一つでも債務者区分をあげたいため、
決算書を人の目で精査して機械がつけた点数を上げる要素がないか探ります。
決算書の税引き前利益が赤字であれば、機械的には「正常先」に該当する点数がつきませんが、
債務者区分を決定する際には「正常先」に該当ということがでてきます。
よって、決算書の最終数値は赤字であるが担当者が
加点できるような決算書構成にしておく必要があります。
特別損失で処理できるのに販管費で処理してしまっている場合
以前の記事でお伝えしたように同じ赤字でも「税引き前利益」と「経常利益」の赤字は点数が違います。「税引き前利益」の赤字は一時的な要因によるもので翌期黒字化する可能性が高いためです。
「役員退職金」「固定資産売却損」「災害損失」「特別償却」「滞留在庫の廃棄」などといったものは
特別損失で処理を行い「経常利益」を黒字化するようにしましょう。
ほかにも「経常的に発生するのではなく一時的に発生する費用で金額も大きい」という内容の経費があれば特別損失で処理を行うことを検討してみてはいかがでしょうか。
販管費で処理するものでも説明を行う
例えば従業員の退職金は販管費で処理しますが、
入社して数年の従業員が退職した場合と長年勤めた従業員が定年退職した場合では金額が違います。
あとは機械の修繕があった、移転費用があったなど通常にはない経費支出があるのであれば
それを担当者に伝えるようにしましょう。
特別損失では処理できないが、内容的には一過性のものであると伝えることも大事です。
役員報酬が高額で赤字になっている場合
「役員報酬を増額すれば赤字になり対銀行としてはよくないのか」と思われるケースもあります。
想定金額は金融機関によって異なりますが役員報酬をだいたい600万くらいにひきなおし
利益を見ることになります。
例えば社長の役員報酬が1200万で300万の赤字という場合、
役員報酬を600万とみれば300万の黒字に転じます。
ただし、社長の個人資産がその年収に応じたものであるかは確認されます。
年収1200万でも貯金がゼロであれば、1200万では足りない生活をしているわけで600万にひきなおしてみることが現実的ではありません。
創業赤字
会社設立から3年以内でまだまだ事業が安定せずに赤字である場合は、
創業からの売上推移がどうなっているかを見られます。
売上が右肩あがりになっている、赤字が年々減少しているのであれば加点されます。
また事業計画が作成されていてその計画にそった形で進んでいればなお評価されるでしょう。
減価償却を計上せずに黒字にしたほうがいいか?
「減価償却を計上すると赤字になるので経常せずに黒字にしておいたほうがいいでしょうか?」という質問もよく受けます。
金融機関は減価償却を計上していなくても減価償却を行って経常利益を見ますので、
減価償却を行わずに黒字となっている場合は黒字決算とは扱われません。
これは次回以降に説明する「貸借対照表」の観点から
減価償却は絶対に行わなければいけないものと金融機関は考えているからです。
納税通信 2017年12月18日号 第3502号に掲載された
連載記事です。「金融機関は決算書のココを見る」という題で
エヌピー通信社の「納税通信」にて 延長連載計11回させていただきました。
※この記事は、投稿日現在の状況、法律等に基づいて書いていますことご了承ください。