連載記事 スムーズに融資を受けるための決算書 損益計算書編

納税通信という週刊誌に
「銀行員が伝授! 金融機関は決算書のココを見る」という題で
2017年12月から毎週連載させていただきました。
納税通信さんにも許可をいただきましたので 原案をこのブログでも記載させていただきます。
読者の方からとても好評だったようで(この記事を読んで購読申込もあったそうです)
今は月1回の連載をさせていただいています。

第二回 金融機関は損益計算書のここをみる(納税通信 2017年12月11日号 第3501号)

第一回で「融資を受けるには決算書が大事ですよ」ということを書かせていただきました。
今回は決算書の中の「損益計算書」をとりあげます。

稟議書で決まる

融資を受ける際には、融資担当者が稟議書というものを書き決算書をつけて、
上司→支店長→審査部に「お金を貸してもいいでしょうか?」と確認をとります。
融資担当者は、自分の判断だけでお金を貸すことはできず、
何人かを口説く必要があるのです。
稟議書には、口説き文句として「この会社に貸せる理由」というものを書きます。
よってその口説き文句を提供してあげることが大事です。
口頭でどのように説明したらいいかはまた後々説明させていただきますが、
「担当者が聞いた説明」よりも客観的な「決算書の数字」のほうが説得力があり重きをおかれています。「決算書の数字」が「この会社に貸してもちゃんと返ってくる」を示しているか、
口説き文句を書きやすいものであることが需要です。

損益計算書の仕組みをじっくり見てみよう

損益計算書は、売上と経費、つまり収入と支払がのっている表です。
会社の稼ぐ力を表しています。
損益計算書の中には「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税引き前利益」「税引き後利益」と利益のつくものがいくつかあります。
銀行員は稼ぐ力を表している表(損益計算書)から「会社がどうやって利益を得ているか」を見ますのでちゃんとその利益を表している損益計算書にすることが大事です。

売上総利益

「売上高」から、
売上に対する直接的な経費(仕入など)である「売上原価」を差し引いたのが「売上総利益」です。
通称、「粗利(あらり)」といいます。原価率がどうなのかを見られます。
ここが赤字になっているような会社は門前払いです。
「これも仕入で処理しておいたらいいかな?」と安易な会計処理を行った場合、
「売上総利益」を必要以上に少なく表示してしまいます。
営業経費でいいものは営業経費で処理するなど売上原価は限定的にされることをおすすめします。
また在庫計上(期末棚卸)も適当にしていると売上利益が実際とは違う数字になったり、
粉飾決算を疑われますのでちゃんと行いましょう。

営業利益

売上総利益から、人件費や家賃などかかった経費を引いたものが「営業利益」です。
本業での利益を表していますのでここで赤字ということは
本業は大丈夫なのか?事業としてなりたっていないのでは?という厳しい判断となり融資は難しくなります。
赤字である場合は、
「何で赤字なのか」がわかるように科目の使い方を工夫するとともに説明をしっかり行う必要があります。

経常利益

雑収入や支払利息など財務的なものを差し引きした後の利益です。
銀行では「けいつね」と言います。
本業と本業外で獲得した利益であり会社全体での利益を表しています。
「営業利益」よりも注目される利益かもしれません。
支払利息を払ってもまだ利益がでているという状態は「返済能力が高い」ということを示していますので
金融機関にとっては安心です。
ほぼ融資実行されるでしょう。
ただ営業利益は赤字で経常利益は黒字というような場合は、「
本業はダメで金融資産の運用などでなんとか黒字にしました」というような状態ですので
同じ黒字でも評価は高くありません。

税引き前利益

固定資産売却損益や投資有価証券売却損益等など
何か特別なことがあった場合の損益を考慮した利益です。
経常利益が黒字でこちらが赤字であってもそんなに気にすることはありません。
一過性のものですので銀行員はさほど気にしません。

 

会計処理を行う際には、勘定科目について深く考えず処理してしまうケースが多いですが、
科目の集合が決算書です。
例えば「特別損失」に該当する内容の経費なのに「営業経費」で処理をすると
本来なら「税引き前利益」で赤字になるところが「営業利益」で赤字になってしまい
融資判断に大きく影響します。

決算書になった時に金融機関に誤解を与えるようなものにならないよう日々の会計処理で注意が必要です。次回は、赤字の場合の説明について書きたいと思います。

 

納税通信 2017年12月11日号 第3501号に掲載された
連載記事です。

「金融機関は決算書のココを見る」という題で
エヌピー通信社の「納税通信」にて 延長連載計11回させていただきました。

 

※この記事は、投稿日現在の状況、法律等に基づいて書いていますことご了承ください。

 









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