銀行融資のノウハウ 納税通信連載記事 貸借対照表のココを見られる

私は元銀行員でして
某金融機関の本店勤務でした。一緒に働いた先輩や同期は役員になったり
支店長になったりと活躍しています。

社会人としてのスタートが銀行員だったので

私の仕事に対する基本的なことは 「金融機関の感覚」であると
なにかにつけ思うことがあります。
税理士業界で働いた当初は「えっ?」と思うことも多々ありました(苦笑)

私の経歴から 納税通信という週刊紙に
「金融機関交渉術」というテーマで連載させていただいています。
最初は紙面の1/4くらいで毎週でした。
とても人気だったそうで 今では1頁で毎月連載となっています。

この記事は最初の連載(平成29年 2017年) の第4回目です。

 

今回から、金融機関が貸借対照表のどこをチェックしているのかについて
お話します。
貸借対照表には会社のプラスと会社のマイナスがのっていて、
財務内容を表しています。
損益計算書が一年の成績を表わしているのに対し
貸借対照表は会社のそれまでの結果が積みあがったものです。
「どういう事業展開を行ってきた会社なのか」
「貸したお金を返す原資はあるのか」を見るため金融機関は損益計算書より貸借対照表を重要ととらえていてじっくりみます。

◇債務超過は貸し出し無理

融資を申し込んだ際にまずみられるのが「債務超過かどうか」です。
負債の部の合計が資産の部の合計より多い場合を「債務超過」といいます。資産をすべて売却してもまだ負債が残り借金が返せませんという状況です。決算書が債務超過の場合は「破綻懸念先」以降に該当し借り入れを行うことはできません。
債務超過の会社については
「なぜ会社が存続できているのか?」に対する答えが用意できていれば
融資が行われる可能性もでてきます。
ほかには「経営者の個人資産があるのか?」も担当者が確認したい点です。

◇資本金は大きい方が有利?

純資産の部は以前は「資本の部」といわれていた部分です。
負債が外部からの調達資金(いずれ返済や支払わなきゃいけないもの)であるのに対し、
純資産の部には株主から調達されたもの(資本金)と
会社自身が生み出した過去の損益(繰越損益)が記載されています。

会社法改正以降、少ない資本金で会社設立ができるようになりました。
資本金が1万円の会社と資本金が1千万円の会社では
後者のほうがお金を借りやすいでしょうか?

資本金の額については
「会社が大きくなるなら資本金もあつくなる」という考えはもっています。
しかし資本金の額が少額であるからといって融資判断が厳しくなるというわけではありません。
それよりも注目されるのは「繰越損益」です。
資本金が小さくでも繰越利益が多ければ決算書点数も高いということになります。

◇金融機関の考える繰越利益の理想

繰越利益については銀行独特のとらえ方があります。
例えば、+100万→△300万→+500万→+100万→△200万という過去5年で繰越損益は200万というA社
と+20万→+60万→+30万→+45万→45万で繰越損益は200万というB社では、
B社のほうが金融機関に好まれるのです。
ほかの点でもそうですが、
金融機関は基本、堅実にコツコツと積み上げて安定的に儲けがでている会社が好きで信用するのです。

会社の中には事業が数年度にわたり
各年の損益のふり幅が激しい決算書になるところもあるかと思いますが、
会計処理を工夫するなどして「安定さ」をアピールできるようにしましょう。あるいは、事業内容や事業取引状態をしっかり説明し、
「こういう理由があるので3年単位で見てほしい」などと説明することが大事かと思います。

◇過去の繰越損失が大きい会社

負債額よりも資産額のほうが大きいという「債務超過」でなくても
、繰越利益剰余金がマイナスで純資産の部がマイナスの場合があります。

つまり累積損失が多額の場合なのですが、これは創業から現在にいたるまでの利益の合計がマイナスということを意味しています。

現状、黒字決算が続いているのであれば、
繰越損失を解消していっていることになりますから格付けを下げる要因にはならないようです。

会社にとって、欠損金の繰越控除の範囲年度を超えた過去の損失を消していくには、
納税しつつ消していくことになりますので大変なのですが、
金融機関は「消していって欲しい」という考えです。
損失がでた場合は、欠損金の繰越控除が適用できる年度内に黒字化するよう頑張りましょう。

節税対策の行き過ぎで毎年赤字を垂れ流しというような状態は、
いずれ資金が必要で融資を申し込む際には話も聞いてもらえないということになりかねます。

 

 

 

 

納税通信 2017年12月25日号 第3503号に掲載された
連載記事です。

「金融機関は決算書のココを見る」という題で
エヌピー通信社の「納税通信」にて
延長連載計11回させていただきました。

 

※この記事は、投稿日現在の状況、法律等に基づいて書いていますことご了承ください。









京都市左京区に事務所を構える女性税理士、
関与先と共に歩む武田美都子税理士事務所にお任せください。

事業者の悩み相談室として
所長が事業主と向き合う事務所にこだわり、必ず有資格者である税理士がお伺いし対応させていただいております。

相続の御相談 相続税・相続対策
相続は事前の対策が大事です。介護や著名な血族の相続争いも経験した税理士が親身になって御相談にのります。

セミナー講師・執筆・原稿
楽しくわかりやすい講演、聞きにこられる方の満足度が高いのが好評で、各方面からの依頼をいただいております。